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遺された不動産の取り扱いに困る…相続放棄ってどのような手順で進めるのか?

身近が方が亡くなった時には、深い悲しみもありますし、突然のことで慌ててしまう…なんてことが多いです。しかし、こういった場合でも、さまざまな手続きを進めなければならないのです。

特に、不動産を遺された場合には、そのまま相続しても取り扱いに困ってしまう…という方が多くなっていると言われています。それでは、不動産を相続する予定がある方で、その不動産の利用価値の小ささや借入金の存在などの理由で、できれば相続したくないと考える場合、どのような手続きをすれば良いのでしょうか?こういった場合には、『相続放棄』という手続きがあるということを耳にしたこともあると思いますが、経験不足から何から手を付けて良いのかよくわからない…と困ってしまう方が多い事でしょう。

そこでこの記事では、遺された不動産の放棄を考えている方のため、相続放棄の手続きの進め方や注意点を簡単にご紹介しておきます。

そもそも『相続放棄』とは?

 

それではまず、『相続放棄』が何なのかについて簡単にご紹介しておきましょう。
日本の民法で、相続における法定相続人と法定相続分(法定相続人が遺産を受け取る権利の割合)が定められています。遺言書などでの指定がない場合は、法定相続人の間で遺産分割協議(話し合い)を行い、法定相続分どおり、もしくは遺産分割協議の決定に従って、相続財産を分け合うことになります。

そして『相続放棄』とは、この遺産分割協議の前段階で「相続できるはずの権利を放棄する」ということを指しています。民法では、相続放棄の効力として「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と定められています。なお、この相続放棄に関しては、相続の開始があったことを『知った時』から、3か月以内にその旨を家庭裁判所に申述しなければならないとされています。つまり、親族などに「相続放棄をする」と告げただけでは相続放棄にならないので注意してください。

「相続するものがあるのであれば放棄なんてしなければ良いのに…」と思うかもしれませんが、近年では相続放棄の件数が増加しています。司法統計による「相続の放棄の申述の受理件数」で確認すると、平成3年の相続放棄受理件数が45,884件だったものが、平成20年には148,884件になり、平成30年には21,5320件となっており、この30年程度で5倍近く増加しているのです。

『相続放棄』の手続きについて

 

それでは、何らかの理由で相続放棄をご検討している方のため、実際の手続きがどのような流れで進んでいくのかを簡単にご紹介しておきましょう。

STEP1 法定相続人の想定

 

まず最初に、誰が法定相続人なのか、相続放棄をした場合としなかった場合で、法定相続人に何らかの変化が生じるか否かを確認・想定しておく必要があります。

STEP2 相続財産の調査

 

次に、相続財産にどのようなものがあるのかを調査しなければいけません。これをしなければ、相続放棄が得策なのか否かが判断つかないです。

STEP3 相続放棄の決断(3カ月以内)

 

上述したように、相続放棄は相続発生を知った時点から3ヶ月以内に相続放棄をする旨を申述しなければいけません。したがって、法定相続人と相続財産の状況を確認したうえで、相続放棄をするか否かの意思決定を行ってください。

STEP4 相続放棄の手法を決める

 

相続放棄の申述を行う場合には書類作成などが必要になります。したがって、必要な書類や相続放棄にかかる費用などの把握が必要です。また、この時には、ご自身で相続放棄の手続きを進めるのか、専門家に手続きの代行を依頼するのかも決めなければいけません。

STEP5 家庭裁判所に相続放棄の申述を行う

 

必要書類などが揃えば、家庭裁判所に相続放棄をする旨の申述を行います。

STEP6 照会書への回答

 

家庭裁判所へ申述した後、相続放棄に関する照会書が送付されてきます。この照会書は、基本的に申述書に記入した内容の再確認といった内容となっていますので、回答後、返信を行ってください。

STEP7 相続放棄申述受理通知書が届く

 

照会書の返信後、相続放棄申述受理通知書が送付されてきます。これは、相続放棄が正式に認められたという通知書ですので、この書面の到着をもって相続放棄完了と考えて良いです。

相続放棄手続きは、基本的に上記のような流れで進みます。

相続放棄に必要な書類や費用について

 

それでは、相続放棄を申述するために必要になる書類などをご紹介しておきましょう。基本的に以下のような書類を用意しなければいけません。

  1. 相続放棄の申述書
  2. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  3. 放棄を申述する申述人の戸籍謄本
  4. 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

上記は、親の財産を子が相続放棄することを想定しています。上で紹介した1~3までの書類に関しては、どのようなケースでも共通して必要になると考えてください。なお、親の財産を子が相続放棄する以外のケースは、上記以外にも他の書類が必要になりますので、裁判所などで確認してください。
「親の財産を子が相続放棄する以外のケース」は、以下のような場合のことです。

  • ・申述人が、被相続人の配偶者である場合
  • ・申述人が、被相続人の子の代襲者(孫、ひ孫など)である場合(第一順位相続人)
  • ・申述人が、被相続人の父母・祖父母など(直系尊属)である場合(第二順位相続人)
  • ・被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者である場合(第三順位相続人)

相続放棄の申述に必要な費用に関しては、「申述に収入印紙800円分」と連絡用の郵便切手代と考えておくと良いでしょう。ただし、専門家に手続きの代行を依頼する場合には、その代行費用として数万円単位の費用が必要になります。

※相続放棄の申述書は、裁判所ホームページでダウンロードが可能です。申述書は、2ページ構成になっており、1枚目に相続放棄をする方と被相続人の各種情報を記載し、2ページ目には相続放棄の申述の趣旨を記入します。記入例などもきちんと用意されています。
> 申述書のダウンロードはコチラ

『相続放棄』の注意点

 

ここまでの説明で、相続放棄を進めるための手続きについては分かっていただけたと思います。特に難しい手続きではありませんが、相続放棄が本当に得策なのか否は慎重に判断する必要があります。

それでは最後に、相続放棄に関する注意点も簡単にご紹介しておきます。

親族に伝えるだけでは相続放棄ができない

 

上でもご紹介していますが、相続放棄をするためには、家庭裁判所への申述が必要になります。「親族に相続放棄する」と伝えれば良いと考えているのであれば、それは間違いですので注意しましょう。親族に、相続放棄をする旨を伝えただけでは、放棄したことにはなりません。

放棄の波及効果について

 

法定相続人は、配偶者を別にして、「第1順位=子」「第2順位=父母、祖父母など直系尊属」「第3順位=兄弟姉妹」の順番で決まります。相続放棄をした場合、その相続に関して、初めから相続人とならなかったものとみなされます。

例えば、「父、子、父の弟」がいる状態にて、父が亡くなった場合は「子」が法定相続人になります。この際に、子が相続放棄をした場合、「父の弟」が法定相続人となるわけです。つまり、相続放棄をした場合には、後位の法定相続人に相続権利が移動して、その人に法定相続人の責任を負わせてしまうということです。こういった事情があることから、相続放棄をする場合は、その旨を後位の法定相続人に伝えておくのが望ましいです。

全ての法定相続人が放棄した場合の注意点

 

全ての法定相続人が相続放棄を申述することも考えられますね。この場合、民法では以下のように定められています。

(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
引用:e-Gov

これは、相続放棄をしても、相続人または相続財産管理人が決定するまでは、相続放棄をした者に管理責任があるという意味です。そのため、相続を放棄したとしても相続財産管理人への引き継ぎが完了するまでは、きちんと管理する必要があると考えておきましょう。

まとめ

 

今回は、遺された不動産の取り扱いに困ってしまう…と言った場合の対処となる相続放棄について簡単にご紹介してきました。相続にさまざまなケースが考えられ、時にはプラスの相続財産ではなく、借金(マイナスの財産)が残されてしまう…なんてことも考えられます。このようなケースでは、財産を相続しないという『相続放棄』が選ばれることになりますので、どういった手続きになるのか程度はおさえておいた方が良いでしょう。

特に不動産などであれば、親元から遠く離れて暮らしている…なんて状況が多くなっており、親が残した不動産を利活用するのが難しく、取り扱いに困ってしまう…なんてケースが多くなっているのです。このような場合には、相続放棄をするという決断が選ばれることになると思います。ただし、相続放棄したとしても、管理責任が消えるわけではない…というポイントには注意しておいた方が良いでしょう。

なお、不動産に関しては、相続放棄以外にも『売却』や『寄付』などの選択肢がありますので、どの選択肢が最も適しているかは慎重に検討しておきましょう。

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