事故物件の告知義務について!国土交通省が策定したガイドライン案をご紹介します
賃貸物件を所有している方が最も恐れるのは、自分の所有物件が事故物件になってしまう…ということではないでしょうか?事故物件とは、基本的に「入居者が亡くなる場所となった物件」のことを指しており、自分が住む前の住人が何らかの理由で「その部屋で亡くなった…」ということにストレスを感じてしまうような物件のことです。ただし、「入居者が亡くなる場所となった物件」とはいっても、なくなる原因はさまざまで、大別すると『殺人』『自殺』『自然死』の3種類が存在しているのですが、この3種類を同等の事故物件として扱うべきか否かの基準は非常にあいまいです。
例えば、凄惨な殺人事件の現場となった…、物件内で自殺してしまった…などと言った場合、当然『事故物件』として扱われるべきですが、家族と暮らしていた高齢者が急に具合が悪くなって突然死してしまう…など、家族の一員が寿命でなくなることなど当たり前のことですよね。つまり、こういった、自然死に関しては基本的に事故物件の扱いにはならないと思います。
それでは、自分が所有している物件が事故物件になった場合、次の入居者募集をする際には、そこで起きた事故についてどこまでの情報を開示しなければならないのでしょうか?事故物件には告知義務があるということを耳にしたことがあると思うのですが、「どこからどこまでの事情を話すのか?」「いつまで事故物件の扱いを受けるのか?」に関する法律的な規定などが無いため、長年賃貸オーナー様をモヤモヤさせてきていたのです。それが、2021年5月に、国土交通省より「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)というものが公表され、今まで明確でなかった事故物件の告知義務の基準が初めて明示されることになりました。そこで今回は、国土交通省が公表したガイドライン案の内容を簡単にご紹介します。
国交省がガイドライン案を制定した背景は?
物件内で、他殺・自殺・事故死などがあった不動産を売却、または賃貸する時には、売主・貸主は、その事実を買主・借主にきちんと伝えなければならないという告知義務があります。他殺や自殺などが過去にあった事故物件には、次にそこに住む方に心理的瑕疵があるとされており、特に居住用不動産の場合は、心理的瑕疵の有無が契約の判断を行う上でかなり影響をあたえることから、事前にそこであった事実を告知しなければならないとされているのです。
ただし、心理的瑕疵告知の根拠となっている「宅地建物取引業法第47条」では、事故物件の告知義務について「告知すべき事故の範囲」や「どのくらいの期間告知しなければならないか」などのルールが明示されていないため、不動産会社によって告知方法などの判断が異なってしまっていたのです。
こういった理由から、国土交通省は、有識者の検討会をへて、2021年5月20日に「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いについて」と題するガイドライン案を公表したという経緯になっています。このガイドラインでは、過去の判例などをもとに、事故物件の告知義務の範囲や期間などがかなり詳しく明示されるようになっています。賃貸物件オーナーからすれば、自分の所有物件が事故物件になってしまう可能性はゼロではありませんし、心理的瑕疵に関するトラブルを未然に防ぐためにも、以下でご紹介するポイントはおさえておきましょう。
なお、今回のガイドライン案は、あくまでもアパートなどの居住用物件を対象としており、オフィスなどは対象外です。
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告げるべき事案について
それでは今回のガイドラインで示された事故物件の告知義務の範囲や期間について解説していきますしょう。このガイドラインでは「殺人、自殺、事故による死亡の場合」「自然死、家庭内事故による死亡の場合」の2種類に大別し、それぞれの対応を示しています。
殺人、自殺、事故による死亡の場合
まずは、所有物件で殺人、自殺、事故による死亡があった場合の告知義務についてです。ガイドラインでは以下のように説明されています。
過去に他殺、自死、事故死が生じた場合には、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、原則として、これを告げるものとする。なお、対象となる不動産において、過去に原因が明らかでない死が生じた場合(例えば、事故死か自然死か明らかでない場合等)においても、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、原則として、これを告げるものとする。
引用:宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン
「殺人、自殺、事故による死亡」については、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に非常に大きな影響を及ぼす可能性があるため、原則として告知義務があるとされています。
告知期間に関しては、賃貸の場合、事故の発生から概ね3年間とガイドラインで明示されることになりました。つまり、事故から3年が経過すれば、宅建業法上の告知義務はなくなるとされています。なお、事故物件の告知義務については、専有部分や室内で発生した物を想定しており、隣地や建物前の道路など、外部での事故は告知義務の対象外となります。しかし、アパートなどの集合住宅に関して、ベランダや共同玄関、廊下や階段、エレベーターなど、日常的に住人が利用する共用部分での事故は告知義務があるとされています。
売買における事故物件の告知義務に関しては、賃貸と比較してトラブル時の損害額が非常に大きくなってしまうことから、告知義務の期限は設けられていません。つまり、何年も昔に事故が発生した…という場合でも、告知義務は残っており、事前に告知が必要だということです。
自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合
次は、自然死、家庭内事故による死亡の場合の告知義務です。ガイドライン内では以下のように記載されています。
老衰、持病による病死など、いわゆる自然死については、そのような死が発生することは当然に予想される(中略)
判例においても、自然死について、心理的瑕疵への該当を否定したものが存在することから、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いものと考えられ、対象となる不動産において過去に自然死が生じた場合には、原則として、これを告げる必要はないものとする。(中略)
日常生活の中で生じた不慮の事故による死については、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられることから、自然死と同様に、原則として、これを告げる必要はないものとする。
引用:宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン
自然死、家庭内事故に関しては、そのような死が生じてしまうことは「当然に予想されるもの」とされており、基本的に告知義務はないとされています。しかし、自然死や家庭内事故の場合でも、発見が遅れてしまい、「室内外に臭気・害虫等が発生し、いわゆる特殊清掃等が行われた場合」に関しては、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼすとされ、告知義務が生ずるとしています。
まとめ
今回は、事故物件の告知義務について解説してきました。今年の5月に国土交通省が事故物件の告知義務に関するガイドライン案を出したのですが、これは今まで「どこまで告知しないといけないのか?」「告知は何時までしないといけないのか?」の明確な基準が無かったことから、トラブルに発展してしまう…ということが非常に多かったからでしょう。
現状は、まだガイドライン案ですが、今後、パブリックコメントを反映し正式に決定される予定となっていますので、賃貸物件オーナーの方は、決して見落とすことができない情報だと思いますよ。なお、少子高齢化が進む日本では、賃貸物件での孤独死が増加していると言われているのですが、すぐに事故を発見し、対処ができれば告知義務の必要はないとされています。逆に、発見が遅れて特殊清掃が必要になると、明確な事故物件の扱いを受けてしまうことになるいので、高齢者が多く住んでいる物件を所有している方は、小まめに入居者さんと連絡が取れるような関係を作っておくのがオススメです。